卒業生だより

2010年度

 
 

国連食糧農業機関 食品安全評価専門官
Food and Agriculture Organization of the United Nations (FAO) Viale delle Terme di Caracalla, 00153 Rome, Italy Food Safety Assessment Officer

活水女子短期大学専攻科食物栄養専攻(1994年卒) 武内真佐美(旧姓:遠山)さん

国連食糧農業機関本部・ローマ市・イタリア(Food and Agriculture Organization of the United Nations, Headquarters, Rome, Italy)

活水を卒業し、臨床栄養士として熊本の病院に3年間勤務(管理栄養士を取得)した後、もっと栄養学を深く学んでみたいと思うようになり、アメリカはワシントン州立大学 (Washington State University)に留学しました。そこで学士課程の最終年に受けた食品安全および食に関する法律の講義が大変興味深く、これをきっかけに食品安全をより集中的に学ぶため、大学院へ進学、修士、博士 (Ph.D) と進みました。修士課程では食品安全および遺伝子組み換え食品に関して、博士課程では微生物学および食品安全行動科学に関して研究し、食品科学・栄養学よりも食品安全の専門性を持つようになりました。

博士取得後は米国で数年間講師・研究員として勤務した後、幸運にも特別研究費をいただく機会があり、タイはバンコクのチュラロンゴン大学とカセサート大学にて講師・研究員として勤務し、比較食品安全学や鳥インフルエンザに関する研究をまとめました。そこで共同研究を行っていたタイの教授のプロジェクトが国連食糧農業機関(FAO)と共同で行われていたこともあって、バンコクでFAOのオフィサーと何度もお話をする機会があり、国連での仕事に興味を持ちました。それまでの自身の国連に対するイメージが変化し、「知識を援助する」という大きな役割を意識するようになり、それをきっかけに、私がこれまでに得た知識を国連のような場所で使うことができるということを知りました。

c Daiva Gailiute
オフィスにて同僚とミーティング中の著者。

私がFAO本部のあるイタリアのローマに来たのは2006年2月、外務省が毎年派遣しているアソシエートプロフェッショナルオフィサーとしてでした。栄養・消費者保護部(Nutrition and Consumer Protection Division)に属する、食品安全の全ての業務を行うユニットでの仕事はまさに願っていたもので、その後 2007年12月に公募された同部署の食品安全評価専門官のポストを得て、現在も同じユニットに属しています。
このユニットは3つのグループ(科学的助言グループ、緊急時対応グループ、能力強化グループ)に分かれており、どのグループも消費者の健康の保護、食品の構成な貿易の確保等を目的として1960年代にFAOと世界保健機関(World Health Organization, WHO)が共同で設置したコーデックス委員会 (Codex Alimentarius Commission)と密接に連携しながら業務を行っています。
科学的助言グループ(Provision of Scientific Advice group)はその名の通り、加盟国やコーデックス委員会に科学的、技術的助言を行います。このグループで私はリスク評価専門官としてバイオテクノロジーやナノテクノロジーなど新技術を利用した食品の安全評価に関する専門家会議を中心に担当し、最先端のリスク評価の結果や世界の優れた科学者たちの意見をまとめるなどの仕事を行う他、国際的な食品安全に関する緊急時の対応も行っています。

FAOでの食品安全の緊急時対応のユニットはEMPRES Food Safety(エンプレスフードセイフティ)と呼ばれており、最近ではフィリピンの豚から検出されたエボラ・レストン・ウィルス、中国での乳製品メラミン混入、アイルランド、イタリアやベルギーなどで検出された食品のダイオキシン汚染などの緊急事態にWHOと協力してまとめた情報を加盟国に配信したり、各国から寄せられる緊急技術援助への対応を行ったりしました。このような場合には日常業務もこなしながらさらに緊急対応のためのプレッシャーの中で集中して仕事を行うため、グループ全員がかなりのストレスの中働くことになります。

能力強化グループ(Capacity Building group)もその名の通り、長期プロジェクトが必要な国のための能力援助プログラムを立ち上げたり、要請に基づき、かつ必要性の高いプロジェクト、ワークショップやセミナーなどを計画、実行したり、地域別、国別に食品安全に携わる人へのトレーニングを行ったりするグループです。国や地域からの要請を受けてプロポーザルを共同執筆することにはじまり、トレーニングのためのマニュアルやガイドラインを作る準備、専門家の選出から執筆の依頼(自分で実際に執筆する事もあります)、加えて校正や外部査読の要請、また実際に小規模トレーニングを行って出版物のパイロットテストとしたり、さらにはデザイナーと一緒に出版物のレイアウトやウェブデザインを行ったりと、ありとあらゆる面から多くの人と様々な視点で一緒に仕事をすることによって、情報や技術、能力や知識を、一番欲している人に一番合ったものを、一番合ったやり方で提供する事の難しさと達成感を同時に感じます。このようなプロセスを経て出版された者を用いて世界各国でトレーニングを行うわけですが、そのために私はアフリカとアジアの国を中心に多くの国に出張し、政府の専門官や食品のインスペクター、食品規格を設定する機関の従事者などを中心にたくさんの人々と共に仕事をしています。4年の間に訪れた国は30カ国を超え、月に2度のペースでの出張は身体的にも過酷ですが、短期間とはいえ非常にたくさんの人と知り合い、学ぶと同時にその人々のために私のできる限りの事を全て出す、というプロセスは大変有意義なものだと思っています。

アメリカやタイでの研究者時代、食品安全というトピックは私にとって純粋に科学的なものであり、微生物学に食品アレルギーや食品毒性学などを加え、消費者保護の視野を含んだ程度のものでした。しかしFAOで私の視野は食品に関する法律や企画、環境の影響、貿易などを含む国際的な政治的影響等の分野にまでひろがり、こうして私の科学面での知識が実際に理論だけでなく現実的なプロジェクトとして成立していくこと、また今までは科学論文を読んで名前を見るだけだった一流の科学者達と専門家会議を通じて一緒に仕事ができることは、私にとってFAOの仕事を通じて得ている大きな財産です。

 
 
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