学長室からのメッセージ

 

 皆さま、ご入学おめでとうございます。ご家族やご友人の皆さまにも心よりお祝いを申し上げます。ご来賓の皆さま、ご臨席を賜りまことにありがとうございます。
 私も今年度から学長を務めることになった者で、三月末に着任したばかりの、加納孝代と申します。なにとぞよろしくお願い申し上げます。

 私が活水女子大学を初めて訪れたのは昨年の夏でした。「活水は坂の上にある。あの坂がオランダ坂といってね、とてもきついよ、入口までたどり着くのが大変だ、あなたに上れるかな」と、活水女子大を知る結構多くの友人たちが、からかうように私に忠告してくれました。
 オランダ坂通りを右に折れ、左に石垣を見上げながら、あの坂を上り始めた時、「本当だ、これはたいへんだ!」と感じたものです。そして最初にある入口の守衛室に寄ると、さらに「この石段を上ってください」と言われました。夏の日ざしは強いし、足もとには大きな石がごろごろしているし、道は曲がっているものですから、いったいこの先何段上らなければならないのだろうかと、目がくらみそうでした。

 でも上り切ったときに眼に入ったあの光景は美しいものでした。やわらかなクリーム色の壁、温かみを帯びた色合いの赤い屋根の建物に、両側からつつみこまれているかのような緑の芝の前庭、そしてその入口には、坂を上ってきた全ての者を迎えるかのように広々と腕を差し伸べている三本の楠の大木、ほんとうに素晴らしいものでした。

 その時に感じたのは、「風景が、建物が、人間を育ててくれる」ということでした。人間は環境によって育てられる、といわれます。言い替えれば、住む場所、通う道、学ぶ、あるいは働く場所というのは、私たちの心と魂を育てるのに、とても大きな意味を持っているということです。そのことは日本人も古くから、「孟母三遷の教え」という話で知っています。中国の思想家である孟子のお母さんが、子どもの教育のために、まずお墓の前から、市場の中に、最後は学校の傍に住まいを移したという話です。

 でも活水女子大をみた昨年夏の私は、ただ傍に学校があればそれで足りるのではない、その学校に気品があり、温かみがあるということが重要なのだ、活水女子大学はまさにそのような学園なのだ、ということを強く感じたのでした。

 いま教職員一同胸を張って、来ていただくのに最高の環境にあるこの大学に、皆さまをお迎えできることを、心より嬉しく思っております。

 さて今年の活水女子大学の年間聖句は、パウロがローマにいる信徒に宛てて書いた手紙『ローマの信徒への手紙』の中にある、「わたしたちは・・・苦難をも誇りとします。わたしたちは知っているのです、苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むということを」という箇所です。苦難、忍耐、練達、希望という順序なのですが、画数の多い漢字が並んでいるので、最初は私にもなかなか覚えられませんでした。皆さんはいかがですか。

 私にとっては実は英語のほうが覚えやすいのです。英語だと苦難はsuffering、忍耐はendurance、練達はcharacter、希望はhope です。英語だとsuffering からendurance、 enduranceからcharacter、 characterからhope というように続きます。私には、suffering があるとき、つまり苦しい時はendurance 耐えなければならない。耐えている、あるいはがんばっているとcharacter、が形作られる。 characterが育つと、その先にhope、つまり希望が見えてくる、というように続いて、その流れがとても分かりやすく、また納得しやすくなります。

 その中にでてくる三番目の語の、character がとくに面白いと思います。最近の日本語では「キャラ」と言われている、あの言葉です。「あの子は明るいキャラだね」とか「暗いキャラかも」というときの、あの語です。「キャラ」はいうまでもなく「キャラクター」の省略語です。「キャラクター」とは「性格」または「人格」と訳されますが、要するに意味するところは、その人の土台、骨格です。外目にも直ぐ分る、その人の骨組、形、それがキャラクターです。人間そのものということもできます。

 苦難があって、それに耐える中でcharacter、つまり人間としてのその人が出来あがる、そうすると、その人が将来なにかを実現する可能性、つまり希望が芽生えるのだ、と言い替えることができます。

 それを大学での勉強に当てはめてみましょう。まず課題、学ぶべき課題、学ぶべき内容が眼の前にあるということになります。それに取り組むには、時間をかけ、注意力を集中し、場合によっては体を動かす必要にもつながるので、忍耐が求められます。周りにある何かもっと魅力的なものを諦めなければならないという、いわば苦難もあるでしょう。しかしそれに耐えなければキャラクターはできないのです。
 キャラクターとは、さきほど「土台、骨格、骨組み」といいましたが、「強くて、太くて、高い柱」のようなものです。私たちは2011年3月に東北地方を襲った大震災、大津波を経験しました。とくに直接あの場にいて、あの大災害に巻き込まれた方々は、自分たちの傍に「強くて、太くて、高い柱」があることをどんなに願われたことでしょう。いま東北地方の海沿いの町々の復興は、「強くて、太くて、高い柱」を具体的にどのような形として実現するか、そのことをめざして進められています。

 さて私たちの学びも、同じです。課題がある、それに取り組むために私たちは自分の力を献げなければならない、しかしそれをすることで、そこに確固とした力が育つのです。それは「底力」と言ってもいいでしょう。そこから、この先に自分のやりたいことを実現する可能性が広がり、希望が見えてくるのです。そしてこの大学における四年間の学びを通じて皆さまの身についた確かな力は、私たちの住むこの社会を、また世界を、より良いものにと変えていくために役に立つのです。

 2013年の4月、大学生活の始めにあたって、私たちはそのことをしっかりと意識したいと思っています。この大学での生活は、あなたがた、そして教員でもあり、職員でもある私たち一人一人のキャラクターを作るためにあるということです。互いに励まし合って、よい四年にいたしましょう。

 活水女子大学の前身には活水学院があります。活水学院は134年前の明治12年、1879年にアメリカのメソジスト教会から派遣されたエリザベス・ラッセルという女性の宣教師の先生によって開かれました。「活水」というのは英語でいうとliving water です。その水を飲めば私たちが生かされ、また私たちをとおして周りにいる人をも生かす力をもった水という意味です。人間を、動物を、植物を、あらゆる自然を生かす力をもつこの水は、イエス・キリストである、というラッセル先生の信仰がこの学校名を選ばれました。先生はとくに女子に、女性に、まず自分たちが生き生きとした人間に育ち、そしてその力を、周りを生かすために役立たせてほしいと願って活水での教育を始められました。女性には、社会をより良いものに変えていく力があります。またその責任があるということです。それをどう具体的な実現に結びつけるか、そのことをしっかりこの活水女子大学で学んでください。

 これからの皆さまの大学生活が、豊かな恵みに溢れたものでありますように祈りつつ、入学式の式辞とさせていただきます。

 
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